青山透子公式サイト 日航123便墜落の真相

日航123便墜落事件の真相を追究するー歴史的裁判開始の幕開け

祝38年目の日本一 阪神タイガース 幻のハッピ「日航猛虎号」

(青山透子所有写真)無断転載禁止

これは、いまから38年前の1985年8月上旬、阪神タイガースの優勝がほぼ間違いないと確信した日本航空大阪支店の熱烈な阪神ファンの職員(当時は半官半民ゆえ職員と言っていた)による応援団「日航猛虎会」が作ったハッピである。

早々に「60年優勝記念」とあるが、これを着てみんなで応援に行く予定であった。

その二か月後に阪神タイガースは日本一に輝いたのだが、しかしこのハッピは、突然起きた8月12日の日航123便墜落事件以降、日の目を見ることなく、誰も着ることなく在庫となり、倉庫に仕舞い込まれてしまった。

その後、私が日航大阪支店で社内教育を担当した時に支店長から一つ記念にいただき、ずっと長年、大切に保管していたのである。久しぶりに出してみたが、「60年優勝記念」と書かれた文字がとても悲しい。なぜならば、あの墜落で、当時の阪神タイガース球団社長で阪神電鉄専務の仲埜肇氏(享年63歳)と、阪神電鉄常務の石田一雄氏(享年60歳)が亡くなったからであった。仲埜氏の座席番号は33H、石田氏は33Gであった。

その座席のサービス担当はDコンパートメントR3の白拍子由美子スチュワーデス(享年25歳)であった。白拍子さんは、ユーミンの「ひこうき雲」が大好きでいつも口ずさんていたという。色が白くてお人形さんのようにかわいらしいスチュワーデスであった。

それにしても、優勝目前にして心躍る仲埜氏と石田氏は、落ちていく飛行機の中でさぞかし心残りで、狂おしいほど無念であっただろう。

このハッピを作り、応援に行くことを楽しみにしていた日航猛虎会のメンバーは、乗客に阪神タイガース球団社長がいたと知って、この不条理に愕然としたことだろう。

さらに優勝記念で、阪神タイガース祝勝ハワイ旅行計画もあったと聞く。その時、お客様に配布する予定もあったのだろう。

まさか甲子園に行く予定が、御巣鷹の尾根になるとは、このハッピを作ったとき、誰もが思ってもいなかったに違いない。そんな歴史が刻み込まれているのである。

その後、長い年月を経て、私は吉備素子さんと出会った。吉備さんは中埜氏の奥様と大阪の遺族会で出会い、「お母さん」と呼んで奥様と一緒に活動してきた。あの状況で夫を亡くした同士として、気遣いとやさしさ溢れる中埜氏の奥様を吉備さんはずいぶん慕っておられた様子である。

ちょうどそのころ、日航の遺族分断作戦によって信頼関係がもてなくなったり、遺族同士の誹謗中傷に心を痛めていたと聞いた。日航側がそんな愚行と裏工作の仕掛けをする理由は、集団訴訟を恐れていたからであろうが、たとえその裏に政府筋、運輸省(当時)の圧力や指示があったとしても、公共交通機関としての責任も自覚もなく、やっていいことと悪いことの区別もつかなくなっているのか。いまも続く日航の隠蔽作戦は度を越えており、吉備さんの原告仲間であった市原和子さんを、元日航社員夫婦が経営する老人ホームに隔離軟禁し、嘘で塗り固めた状況下で、裁判を取り下げさせた行為は、犯罪であって本当に卑怯で下品極まりない。

38年前にこのハッピを作ったときの純粋な思いは、今の日本航空にあるのだろうか。あの頃の社風は、どこに消えたのだろうか。

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2023年6月1日、東京高等裁判所の判決の日から三か月後の9月5日、現在、最高裁にて被上告人である日本航空は、圧力隔壁説を強調した記事を知り合いの記者に書かせたとの内部情報を得た。R.K.(ジャーナリスト・作家、元産経新聞論説委員)氏は、安全啓発センターの語り部の社員を持ち上げた、それがいかにも正しいことを言っているように見せかけたヨイショ記事を書いていたが、それがジャーナリストのすることなのだろうか。しかも記事の6日前は、最高裁裁判所に吉備さんが上告し、受理された日(2023年8月30日)である。

R.K.氏が現在進行中の裁判開始状況や次々と明らかになる事実を書かず、一切取材もせずに「圧力隔壁修理ミス」を8月12日でもないのにいまさら書く理由などなく、その計画性といやらしさは、日本の報道が機能不全に陥っている証拠である。

そして、吉備さんを愚弄するものである。あのような記事や、その作為は一般人にもすぐ見破られてしまう。こういう人がいつまでも表に出てくる以上、吉備さんは訴訟を止めないと決心された。

民放番組でJALを称賛するのも結構だが、スポンサーとして金を積み、無料航空券を渡して作った番組など、世間から冷めた目で見られていることに気づくべきである。

こういった馴れあいやもたれあいが大きな弊害となって、ジャニーズ問題でわかったように報道が堕落してしまうのである。どこに、この日航123便の真相を追究する報道番組があるのだろうか。

あれから38年間垂直尾翼崩壊のきっかけとなった異常外力の着力に関する再調査も一切ない。事故調査委員会も、「~のことから異常外力が発生したと考えなければDFDR(飛行記録装置)記録値の説明ができないことが分かった(報告書p79)」、「~それぞれ異常な外力が作用したことが確からしく考えられる(付録p101」、そして垂直尾翼に着弾をした黒い丸印が書かれた図表(付録p116)」を、一切無視することは、法の支配どころではない。上記のジャーナリストR.K.氏は、裁判記録どころか、まさかこれも読まずに署名入り記事を書いたのだろうか。

プロであるならば、あまりに手抜きすぎるのではないか。

 

先日、調査報道を志す若者と会ったが、その初々しい視点とやる気は、上記のR.K.氏のような人間が仕切るような腐った土壌からは生まれない。よく言う「日本は外圧に弱い」のではなく、外に出なければ芽が出ないのである。

こうやって、日本中に何等かの利益と自己保身を本能的に優先し、面倒なことは「結構です」と言って断り続け、職業の使命を放棄して見て見ぬふりをする人間ばかりが蔓延すれば、まともな人間は育たない土壌に、自らしてしまうのである。

プロとしての自覚を持ち、自分との闘いを軸とし、それを正当に評価する世の中と努力が裏切らない、数値化して目に見えるスポーツの世界がうらやましい。

 

このハッピに描かれた鉢巻姿のカワイイ虎は、素直な目で私たちを見つめている。

38年目で再び日本一に輝き、昨日優勝した阪神タイガースのお祝いに、中埜肇氏と石田一雄氏のご供養と哀悼の意を込めて、この幻のハッピを皆さんにお見せしたい。お二人も天国で目を細めて喜んでおられるだろう。

阪神タイガース日本一、本当におめでとうございます。

青山透子