この裁判をデタラメな都合勝手の解釈で愚弄し、違法な誹謗中傷を続けるユーチューバーと、彼を利用して悪意を持つ情報提供者がいるため、皆様にこの裁判のポイントと判決について簡単に解説します。
この民事裁判は、吉備さん(原告)側によって提出された甲1号証から甲72号証までの膨大な量の証拠に対し、JALが提出した乙第1号証から乙第2号証までのたった二枚ほどの新聞記事のみで判決が下ったという前代未聞の不当裁判です。
しかも裁判準備中に、事故調査委員会はこっそりと、国民に知られないように、事故当事者のJALにボイスレコーダーを返却していたことがバレたのです。
どこに、520人という犠牲者を出した重大な証拠物を、事故を起こした当事者である航空会社に返却するような国があるでしょうか。それは例えば、殺人犯に証拠となった包丁を返すようなものです。つまり、この日航123便墜落事件は、警察も機能せず、事故調もゆがめられて機能しないまま、長年再調査もせずにほっておかれたのです。その現実を目の当たりにして、原告で遺族の吉備素子さんは驚きを隠せませんでした。
さて、この裁判のポイントと、なぜこの裁判が不当判決なのかを解説します。この解説はすべて裁判資料に基づくものであり、どの弁護士に聞いても間違いのないほど正確な情報を保証します。
1 東京地方裁判所で起きたこと
この裁判を最初に担当した三輪裁判長は、吉備さん側(原告)の訴状ならびに準備書面(民事の場合は先に書類を出して相手が検討をする時間が与えられる)を読み、これは重要な裁判だということで認識し、乏しい証拠(新聞記事のみ)のJAL側の弁護士に対して、もっと真剣に議論するように促した。JAL側弁護士は頭をかかえていた。吉備さんはこの裁判長ならば、公平に裁判を行って下さると安堵した。
ところが、判決を下す直前の法廷で、前触れもなくいきなり法壇に登場したのが、女性の加本裁判長だった。しかも、審理されてきた内容を理解しているとは思えないほどのふるまいであり、事実、吉備素子さんの陳述が入ったDVDを証拠調べの対象としなかった。その理由は、「郵便が届いていないから」であり、JAL側弁護士も「自分たちにも届いていない」と法廷で大声を出した。その後、再度検討して判決の日時が延びた。
案の定、その判決は極めてJAL側に有利なものであった。情報を開示しなくていい理由として、「JALは民間企業だから義務はない」、「吉備さんは和解したからそれで終了」だけであった。「異常外力」や目撃情報も含め、機長の会話に文字記録が欠けている部分や空白がある事実などは、JAL側が一切答弁せずに無視したことをそのまま利用して裁判官も無視した。つまり、否定するほうが証明しなければならないので、必然的にボイスレコーダーをJALが提出しなければならない。それを避けるために、議論そのものを避けたのである。
その本質も理解せずに、これをもってユーチューバーらが都合勝手に「異常外力」は否定されたとか、内圧だとか、後部圧力隔壁説が勝った、という議論には一切成り立たない。さらに付け加えると、過去「異常外力着力点」を認識した記者などがいて本を書いたとしても、その内容は印象操作に終始し、誰かの意向を踏まえて意図的に書いたものであろう。いわゆる事例として挙げて、否定することで内圧を強調したかったのであろう。今頃、自分が先だと主張するならば、なぜ、ジャーナリストとして知った段階で客観的に情報公開を求める行為をしていなかったのか。
今回は初めて裁判という場で正面から捉え、裁判所に提出した私の文献は、真っ向から「異常外力着力」の存在とその結果、垂直尾翼が破壊されたという計算式に基づき、正々堂々と取り上げている。十分な証拠をもってその存在の可能性を強く指摘している。
過去、知ってて知らんふりをし、何の行動も起こさない提灯記者や、その辺の知識も事情も知らないユーチューバーなどに、とやかく言われる筋合いは一切ない。私への侮辱に満ちた動画の削除要請をする。誹謗中傷、侮辱罪のガイドラインに沿って一週間だけ待つが、それ以降は法的措置をとる。なお、明らかに私が類推されるものも当然含まれる。
さて、突然入れ替わった加本裁判長は、吉備さんの遺族としての知る権利と運送約款上、JALに説明責任がある、という事実は認めた。
2 東京高等裁判所での出来事
控訴した法廷では、吉備さんが今度は自分の声を法廷に届けたいと陳述をした。その陳述中、土田裁判長はJAL側の弁護士は見ても、吉備さんには目もくれなかった。いわゆる無視である。さらに、三宅弘弁護士に対して、土田裁判長は、「これ以上証拠を出す必要もない」とため口で告げた。
この段階ですでに判決が決まっているような不公平極まりない法廷であった。本来はJAL側が出すべき和解調書が出てこないため、仕方がなく、こちら側が裁判所内の書庫から発掘して当時の和解に至る経緯や審理内容、和解調書を提出した。そこから驚くべき事実がわかった。簡単に3つにまとめてみる。
- 和解はあくまでもボーイング社が相手であり、JALは最後にちょっと顔を出した程度であったこと。つまり、法廷での審理に一切加わっていなかった。それにもかかわらず、JALと遺族が和解したのだというミスリードが世間に伝わっていたのである。
- 和解案が常識的ではなく、あまりにも異常な内容であったこと。これについては原文を今発売中の「日航123便墜落事件―隠された遺体」に掲載しているので、それを読んでいただきたい。
- 遺族には「異常外力着力点」に関する説明を一切していなかったこと。後からわかったならば、再調査とともに、遺族に説明をしなければならないという義務をJALと事故調がこっそりと放棄していたこと。
あまりにもおかしな状況下での和解であった。
以上が、この裁判で明らかになったのである。これは大変意義のあることであり、重大な事実である。
しかし、この土田裁判長は、この異常なほどの和解案を採用して、原告側が出した証拠にすがったのである。そして吉備さんに対して「JALが情報を公開する必要がない理由は、あなたが和解したからだ」とした。
これは明らかな不当判決といえよう。つまり、どの遺族に対しても、真摯に向き合い、墜落原因を説明する責任がJALにある。しかし、JALは不都合な部分をカットして遺族に説明をした。それが今、裁判でバレたにもかかわらず、裁判長は「もういいでしょ」という判決だったのである。
愛する人を墜落死させられた遺族に対して、新たな事実がわかったら、調査をすべきなのは当然である。どこに、「お金もらったからそれでいいでしょ」という判決があろうか。
3 最高裁判所での出来事
最高裁判所に上告し、第一小法廷での審理となった。全文は新刊本に記しているから原文を読んでいただきたい。
岸田首相が国賓待遇を受けて米国に旅立つ10日前に、突然「棄却」の紙が届いたのである。恐らく何も読まずにただ政府におもねり、棄却をしたと思われる。これは明らかな司法の汚点であり、戦後の情報開示がこの日本で全く機能していないという現れである。
情報開示とは当たり前に30年経てば、先進国の法治国家は開示しなければならない。しかし、この日航123便だけは、こっそりとボイスレコーダーをJALに返却し、しかも、今後JALにお伺いを立てても、国民は聞けないのである。
まさに悪意をもったブラックボックスだ。
これでいいのだろうか。これで再発防止などできるのだろうか。いいはずはない。
情報公開制度には、自発的な「寄付制度」もある。裁判内で、三宅弘弁護士は、JALに寄付行為を促したが、それをも無視している。どこにこんな偉そうな民間企業があるのだろうか。
国が保管すべきものを、単なる民間のしかも事故を起こした航空会社が保管し続けて、誰にも開示しないまま、偽情報を流し続けているのであれば、立派な虚偽の罪であり、詐欺罪である。その協力者と化したワタナベケンタロー動画などは、何も知らない視聴者を愚弄していると言われても仕方ない。しかも、吉備さんの味方の人たちの善意で課金を稼ぎ、「日航123便墜落の真相を明らかにする会」に、寄付を申し出た人の金を「明らかにする会」から彼に渡しているため、寄付者の意思に沿わない内容を垂れ流していることになる。
ワタナベケンタロー動画に対して「無責任極まりない!」、「金返せ!」という声が多数届いていることを明記しておく。
皆さん、今回の情報開示裁判で明確になった事実は大変重要であり、これはけして「異常外力」が否定されたわけでもなく、後部圧力隔壁説が勝ったわけではない。上記のように、単に「和解したから終わり」なのだ。つまり、和解していない遺族には、チャンスが残されている。ぜひ正当な権利を行使してほしい。その方法も含めて、拙著を読んでいただきたい。