「日航123便墜落の波紋ー天空の星たちへ」公式ブログ

1985年に起きた日航123便墜落事故を、当時日本航空スチュワーデスとして勤務していた著者・青山透子が、事故の真相を追い求めて綴ったノンフィクション

ならぬことはならぬものです―会津藩士の言葉から学ぶ 青山透子

ならぬことはならぬものです―会津藩士の言葉から学ぶ

 

今年の8月12日の日航123便に関する報道は例年とは異なっていたのを皆さんはお気づきだっただろうか。

まず、各局のテレビ報道では、今まで枕詞として当たり前のように「墜落原因は後部圧力隔壁破壊による」と言っていた言葉が全く出てこなかった。むしろ、事故時の映像として、墜落現場で朝まで燃えている炎の場面をクローズアップしたり、機長のボイスレコーダーの声とともに、生のボイスレコーダーの映像が出たりした。これは34年目にして大きな進展であり、大変重要なポイントである。

新聞報道では、大手新聞は例年通りの精霊流しや登山風景だったが、墜落現場の群馬県の上毛新聞は気骨溢れる記事であった。特にシンポジウムを行った翌日の2019年7月17日付では、「再調査」という文字が34年目にして見出しとなり、その内容にも自衛隊という文字が入って画期的であった。群馬県の新聞としての責任と義務の現れであろう。さらに14日付では、赤坂日航社長と再調査を求める遺族の談話もあり、「事実見直し続ける努力をし続ける」として追加記事が出ていた。これは大変重要なことである。ただ、記事の中で赤坂氏が「相模湾はとても深い」と語っていたことが驚いた。水深160メートルは、深いのか?その認識が技術者とは思えないが、知ってて知らぬふりなのだろうか。念のため、東京タワーは333mとされているが、その半分の深さ、つまりとても浅いのである。

残骸のある所は水深160m、これぐらいは覚えておいてほしい。念のため相模湾で発見された日航機残骸のニュース映像をリンクしておく。

この引き上げについては、また別途記述する。

123便の残骸か…相模湾海底で発見 日航機墜落30年

各紙に共通だったのは、8.12連絡会事務局長のコメントだけではなく、他のいろいろな遺族の談話を掲載しており、その中で事故原因は後部圧力隔壁破壊という話や事故原因の説明も出てこなかった。ただ朝日新聞のみが、子供相手のような説明記事で、この枕詞を使用していた。しかも、私の新刊本広告が出ている同じページのちょうど上にその記事が出ていたのだが、これは日航123便とは何か、とわざわざ説明して下さったのか、はたまた事故原因は後部圧力隔壁破壊ですよ、と強調したかったのかはわからない。ただ、こちらがお客様としてお金を出している広告の上にその記事をもってきたのならば、せめて、この事故原因では不起訴となって、いまだに犯人はわからない、と説明を加えたほうが子供に正しい情報が伝わっただろう。それでこそ客観性がある報道、というものである。

それにしても34年間、すでに場所がわかっている相模湾に沈んだままの残骸の引き上げや再調査を拒み続け、マイクロフィルムで保存している当時の資料を開示しようとしない国土交通省外局の運輸安全委員会の存在価値は何だろうか。自説(事故調査報告書)への裏付けとなった資料を公開したくない、ということは、そこで書かれてものは偽りの報告書ということになる。

私たちは「ならぬことはならぬものです」と強く言い続けなければ、真の空の安全などは保てない。空の安全とは、この問題を解決してこそ、安全といえるのである。

 もう一つ、ならぬことはならぬ、パイロット飲酒事件が起きた。

今回の飲酒事件の顛末は次の通りである。赤坂社長が御巣鷹の尾根で「飲酒問題に陳謝する」会見した2日前の8月10日、鹿児島発羽田行の日航副操縦士からアルコールが検出されていた。しかし、12日の会見ではそのことには一切触れなかった。

これは日本航空の危機管理のなさと不誠実さが暴露された事件である。8月12日に赤坂社長が神妙な面持ちで「皆さまに、日航、何やっているんだ、と言われないように飲酒問題は解決しなければいけない最大の課題」と語っていたが、その時すでに新たな飲酒問題の発生があったにもかかわらず、その場で語らず、謝罪もしなかった。

社長ご本人の弱い気持ちや恐怖心がその言動を止めたのであろうが、それはむしろ逆であり、不誠実さを暴露したようなものである。あの場で言えないような人は社長の器ではない。誰が止めようが、きちんと説明できないような人は隠蔽体質が身に沁みついていることになり、その表情には指導能力の欠如が感じられた。

なお、この報道内容が各紙バラバラであったことも、日本航空の広報が全く機能していないことやその内部体制のお粗末さも暴露した。

日航は、発表が遅れた言い訳として「副操縦士のアルコール摂取について2日間、確認の作業をしていたから」という子供のようなことをコメントしてきたのである。今時、2日間も確認するほど、鹿児島は遠い地なのだろうか?自社便で行けばすぐだろう。

新聞各紙では、①その副操縦士が立ち寄り先の居酒屋で飲んだのでその確認、というのもあれば、②昼食にホテルでボーイに出されたコップの中に、水ではなくお酒が入っていたのを誤って飲んでしまった、③ホテルの部屋で、前夜自分が購入した日本酒を乗務前に水と間違えて飲んだ、というのもあった。

驚くべきバラバラの理由である。これはいったい何の現れであろうか。

統一されていないのはそれぞれが情報源に取材して日航側が適当に伝えている、つまり広報がまったく機能していない、ということである。さらに、社長は会見を避けて逃げた、ともいえる。

誰が水と酒を間違えて飲み干す人がいるだろうか。54歳の男性が水とお酒の区別もつかないほどであったのか?しかも乗務前に、である。これは恐らくアル中(アルコール依存症)と同じで、自制できない域に入っているのでないだろうか。操縦かんを握る手が震えるから、仕事に不安を覚えるから、気を落ち着けるために一杯飲んだ、というのならば筋は通る。

これが今の日本航空という会社の社員のしたことであり、働く現場の現状だ。極めて病理は深い。

酒をあおって操縦かんを握ることなど、ならぬことはならぬ、のである。

 

 皆さまに明確にお伝えしておきたことがある。ちまたでは、「日航になにか恨みでもあるのか、許してやれよ」、という言葉を私や遺族に平気で言う(ネットでわざと書く)人がいる。

これは重大な問題を含んだ言葉であることに皆さんは気づいているだろうか。私が研究者として書く内容は、恨みなどではなくむしろ事実の追究であってそこに客観性があることは読者の誰もが気付くであろう。その結果は、日航の冤罪や罪についての考察にもつながる。もちろん、逆に日航にいた人間だから、その罪の軽減に加担するのか、という意見もあろうが、それについても本を読めばわかる通り、どちら側からも書いている。

それでは日航の罪とはなにか。

不起訴となったことからもわかるように、事故調査報告書とは異なる新たな墜落原因があるとすれば、日航の罪ではないことはこの公文書が証明した。ただし、誰かから強要されて、高木養根社長(当時)が、殺される、と震えていたほどの恐怖心を感じ、命の危険にさらされていたのであれば、脅迫によって不本意ながらその罪をかぶったことになり、日航側の罪は犯人隠避罪のようなこととなる。共犯かどうか?これは構成要件にどのようにあてはめるかによる。簡単にわかりやすく書くと、運輸安全委員会(当時)は事実と異なるのであれば公文書偽造、故意的に偽造改ざんは証拠隠滅罪となる。しかし、危険を感じるほどの脅迫を受けたのならば、その罪は軽くなるだろう。それでは相手に恐怖心を抱かせるほど脅迫した当人がいるはずだ。それは当時の運輸省か、首相官邸サイド、中曽根元首相、自衛隊幹部、他の誰かだろうが、これらは脅迫罪となるが、今のところわかっていることはここまでである。

いずれにしても、いまだに真犯人にはたどり着いていない。真犯人は、今でも遺族に一切謝罪もせずに、罪とも向き合わず、隠蔽体質の人々に守られて、のうのうと生きていることになる。520人の命を絶った犯人であるから、史上最大の大量殺人事件となる。

私はその原因不明を追究しているのであって、ご遺族は真犯人からの謝罪を強く望んでいるのである。それは当たり前のことだろう。

従って、先に書いた「遺族は日航を許してやれよ、青山透子は会社に恨みでもあるに違いない」という論理は破たんしてる。

恐らくこれを書いた人、言った人は関係者であろう。しかも単に自分の年金がなくなるとか、自分の息子や娘の就職先(日航)がつぶれては困る、とか、責任をかぶりたくない国土交通省とか、そのたぐいであろうが、いずれも自己保身と自分の食い口のためだろう。そのお金はどこからくるのか。お客様が航空運賃として支払ったお金や国民の税金である。

それに対して、いまだに隠蔽するとは、これも、ならぬことはならぬ、のである。

もちろん、不確かな情報で、一方的に相手側の不満やはけ口を鵜呑みにしてもいけない。面と向かってきちんと話をせずに、本当の事情も知らずに人を貶めるように陰でこそこそと企てをしてもいけない。また、純粋に事故原因を追及しているふりをして、実はかく乱するのを目的として書いている人もいる。変な人を装い、これを追及する人に対してレッテル張りを一生懸命している人、それに加担している人もいる。こういった様々な人間の心の裏側を認識して、思惑に引っかからないように冷静に判断をして筋を通すことは人として誰もが心がけるべきであって、ジャーナリストならば特にそうあるべきだろう。

ならぬことは、ならぬことはならぬものです。

追記だが、一つ老婆心ながら忠告しておきたい。

航空会社の乗務員たちの仕事は、フライト時間が早朝や真夜中も多く、過密スケジュールの中で働くのが日常であり、昔と違って国際線のほとんどが長距離フライトの直行便では、機内で仕事をする時間も長く、時差もあり、心身の乱れが出てくることは当然だと思われる。そこで、アルコールに依存しなければ眠れないとか、気分が高揚しない、乗務出来ないという人が出てくるのだろう。アルコール検査が厳しくなれば、次に取る行動は薬物依存である。官僚(経済産業省文部科学省の職員)が職場で大っぴらに注射器を使用して覚せい剤を使い、逮捕されるという異常な今日この頃、そのうち薬物依存症のパイロットが出てきてもおかしくない。フライトで訪れる海外では合法の国もあり、その辺で気軽に購入も出来るそうだ。そうなると、「アルコールではすぐ検知されるから、薬物にしよう」と言い出しかねない。

それがどういう行動に出てくる危険性があるかについて米国の航空医療関係者に聞いた。大麻、危険ドラッグ、覚せい剤といった薬物に依存して操縦かんを握った場合、次のような場面で危険な事態が生じる。最低安全高度(minimum safe(flight)altitude, minimum enroute altitude)時の判断や有視界飛行方式(VFR:visual flight rules)の時に、薬物よって気持ちが大きくなって蛮勇を振るう行動に出る、ということだ。

つまり早い話が、ミニマムの状況での判断の際に、引き返す勇気ではなく、事の是非を考えないで向こう見ずの勇気(本物ではなく、薬物による勇気もどき)が出やすくなる。するとどうなるだろうか。

いくら訓練を積んでいても、とっさの判断が出来なくなるということになってしまう。「突っ込んで行け!」と精神が高揚して、地面に激突ともなりかねない。その結果、被害を被るのは本人のみならず、大勢の乗客である。事が起きてから謝罪ではすまされない。

昨今、聞くところによれば、官邸周辺でも、外遊機内でもこういうタイプの人が多く出没するそうで、「ちんちくりん」なことを話すらしい。少しはいろいろな角度から論文を読んで研究したいそうだが、きちんと読んで理解出来るかどうか、勢いをつけて気分ばかりが高揚しても困るのである。

搭乗者のみならず運航乗務員、客室乗務員の手荷物検査に麻薬探知犬による取り締まりを強化すべきだろう。火の無い所に煙は立たぬ、ならぬことはならぬものだ。