「日航123便墜落―遺物は真相を語る・天空の星たちへ」公式ブログ

1985年に起きた日航123便墜落事故を、当時日本航空スチュワーデスとして勤務していた著者・青山透子が、事故の真相を追い求めて綴ったノンフィクション

「沈黙の春」から「苦海浄土」という記録本に学ぶ 青山透子

私がなぜ日航123便事件を取り上げたかの直接的理由は3冊を熟読してもらえばすぐわかるが、世の中には邪推による勝手な理由づけで私を貶めようとする悪意を持つ人がいるのは事実である。そこで、そういう人間にもぜひ読んでほしいと思う本を紹介する。

事実を知って素直におかしい、と思った時、書く勇気と意義について、私に深く考える機会を与えてくれた本である。

まず、私は1990年の花博(大阪)、2005年の愛・地球博(名古屋)に政府系の仕事で関わったが、いずれの博覧会もテーマは自然と環境であった。その時、昔読んだ「沈黙の春レイチェル・カーソン著)」を思い出した。海洋生物学者の著者が、ある日何気なく通勤途中に湖を見たところ、大量の魚の死骸が浮かんでいることに驚いた。調べてみると、なんと、その周辺では鳥たちも魚も虫も死に、農夫も健康を害していることに気づいた。そこで原因を探り、過剰な殺虫剤による公害汚染という大きな問題を突き止め、それを告発する決心をして調査した結果を本にしたのである。

発表当初、ものすごい個人攻撃にあい、「ヒステリー女、オールドミスのくせに未来を語るな」などという今では驚くほどのセクハラ、パワハラを超えた非難を受けた。これは主として権力者(政治や殺虫剤メーカーの巨大産業側)による嫌がらせであった。それでも彼女はひるまずに訴え続けた。それが、「毎年、春になり鳥の声がしない世界に住みたくはない」という信念であり、「沈黙の春」という本のタイトルとなっている。偶々友人を介してその時のケネディ大統領夫人ジャクリーンケネディ氏の目に留まり、実態を真摯に受け止めたジャクリーンが大統領を説得し、多額の献金を受けている巨大産業協会の圧力をものともせず、公害問題を取り上げて検討することになったきっかけとなったのである。この時、殺虫剤メーカ―の企業に多額のお金で依頼された御用学者は必死に彼女の調査のあら捜しをして、批判を続けた。しかし、市民たちはその様子に「おかしいものはおかしい」と味方をしたのである。

こういうジャクリーンのような存在、そしてそれを真摯に受け止めるような政治家が、今の日本にいるのだろうか。残念ながら33年間いなかった、ということになる。そしてジャクリーンのような賢い妻もいないことに、私は失望している。知ってしらぬふりをする人間が、あまりに多すぎる。今の首相夫人はいかがなものか。大変残念なふるまいだ。かすかな期待は泡と消えてしまった。

さらに、自民党内の有り様はいったいどうしたものか。石破氏を支持すると安倍陣営に恫喝されて、アンタの将来はない、と言われた、といった記事が出ていたが、内輪でさえそのような振る舞いをする政治集団に、未来を託せるとは到底思えない。

そういう日本の悲劇は、水俣病などの公害問題への対応や福島原発にも通じる。

私が尊敬する石牟礼道子氏は普通の主婦感覚として、やはりおかしいことはおかしいと水俣病の実態を訴えた本「苦海浄土」を出版した。裁判記録や証言記録を丁寧に書いたこの分厚い本は、石牟礼氏の患者への温かいまなざしと、原因がチッソ株式会社の排水という事実を知りながら野放しにしたことで公害がさらに広がった国家の犯罪への怒りが交差している。御用学者は「腐った魚を食べたからだ」と現地調査もせずに国に報告している。なお、宇井純氏がペンネームで告発本を出しているが、この宇井先生も大変尊敬に値する方である。

いずれも、疑問を持って調査をしてその結果を書くというスタンスは、私との共通点が非常に多く、何度か読み返すバイブルのような存在である。

これらの中で重要な役割を果たすのは市民の力だ。通常の感覚をもつ普通の人たちが声を受け止めて自分の事として考えることで、未来は良い方向にいくが、それを失った時、あらぬ方向に向かってしまうのである。結局、自分たちにその火の粉は降りかかる。

今の日本で求められることは、一人ひとりの誠実な役割である。そのきっかけに拙著がなればこんなうれしいことはない。

下記、レイチェル・カーソン日本協会HP

レイチェル・カーソン日本協会

宇井純先生から学ぶシンポジウム記録

http://www.einap.org/jec/jec_old/sono/ui-manabu-full.pdf

石牟礼道子氏(熊本県教育委員会

http://kyouiku.higo.ed.jp/page2022/002/005/page2332.html