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「日航123便あの日の記憶 天空の星たちへ」公式ブログ

1985年に起きた日航123便墜落事故を、当時日本航空スチュワーデスとして勤務していた著者・青山透子が、事故の真相を追い求めて綴ったノンフィクション

フジテレビの日航機事故機内再現ドラマは一体何のために、誰のために制作したのか?

フジテレビ日航123便墜落事故の機内再現ドラマHPより(2014年8月12日18:30~20:54放送済み)

「取材を進める中で、乗員・乗客のご家族や事故に関わった方々の多くが口にされたのは、何故事故が起きてしまったのか、何故520人もの尊い命が一瞬にして奪われなければならなかったのかという、29年間全く変わらずにある思いでした。日航機墜落事故は、やはりまだ終わっていない事故なのだという印象を改めて強く持ちました(フジテレビ、演出:栩木信人)」

この命題に対して、果たして答えた内容であったのか?大きな期待を持っていた私にとって、非常に残念な内容でした。

この気持ちは、恐らく制作担当者自身が一番よく分かっているはずです。

もし、あの内容や構成が優れていると思うならば、「何のための番組だったのか」、「なぜ自分はこの事故について制作したのか」、制作者自身がもう一度問うてほしい。それは番組を作った自分を客観的に見つめ直して頂くか、己を顧みて自己否定してもらうしかないと思います。

私の大まかな番組に対する分析を書きます。

★良かった点

①今まであまり表に出ず、口を閉ざしていらした吉崎博子さんの証言に基づく再現ドラマとしては、機内の様子を知らない私たちにとって、資料的な価値は高いと考える。私の先輩方の写真や、同僚が機内で酸素マスクをつけて乗客と冷静に話をしている写真が放映されたのは重要である。

②谷口正勝さんのご遺族が、いまだに事故原因等に納得をしていないという様子が伝わってきたのは価値が高い。つまり、私がお話を聞いた遺族の方もそうであったが、事故調の報告書について、納得していない人が多いということが明確になった。

習志野第一空挺団が、翌朝の7時54分まで出動命令が出ていなかったことの証明。つまり日の出と同時に墜落現場がわかったにもかかわらず、朝日が昇って、暫くするまで動かなかったことがわかった。そして現場に降りたのが9時30分、いとも簡単に山頂に降りた実写が放映されたことである。

1985年当時、墜落場所が分からなかった。その理由として、夜間訓練もしている第一空挺団の精鋭部隊が「夜は照明がないから暗くて降りれない、周りに木々が多すぎるので無理」と国会で答弁していた。何が空挺団なのか?戦争は昼間のみか?と誰もがおかしいと思ったことを、実際に実写で、逆に証明してくれた。

④その空挺団の方が、遺体を「炭だった」と証言してくれたことは、大きな意義ある。私が取材した群馬県警察医の方は、灯油をかぶった遺体を数多く見ていたが、あの事故の時の骨まで炭になるようなことはなかった、と証言している。つまり、ジェット燃料のケロシン(灯油の一種で揮発性が高く安全性があるもの)をかぶったぐらいでは炭にならない。それを最初に遺体を見た空挺団の方が自ら証言してくれた。

以上が、この番組の良かった点である。

次に、この番組の悪かった点

①科学的データをもとに再現したボイスレコーダーから、何もわからなかったということを明確にしたにもかかわらず、意図的に事故調の発表を誇張した。つまり、米国のデンバーまで行き、専門機関に分析を依頼したが、あの3つの音の違いとそこから割り出した距離の測定の間には、圧力隔壁の位置と尾翼の両方が入っており、どちらか明確か、わかるはずもない、ということがわかった。それにもかかわらず、CGで圧力隔壁から垂直尾翼と崩壊する過程を故意的に作り、メディアによる一種のプロパガンダを実行してしまった。

例えば、国策によって戦争へ導く為、民衆を意図的に戦争へ向かわせようとする宣伝行為のようなものをプロパガンダというが、ジャーナリズム精神と対局にあるこの行為をしてしまったといわれても仕方がない。

②高浜機長の声の分析で「まずい!」という言葉を分析して出していた点はよいが、

それならば、なぜ、「まずい」と言ってから、「なんか爆発したぞ」と言い(18時24分39秒)その3秒後の18時4分42秒に、「スコーク77(緊急信号)」を発信しているのだが、これについての説明が抜け落ちている。

通常はこの緊急信号を発信する前に、機長は異常事態を把握し、その状況での対応や必要性に応じて発信をすることになっている。しかし、この瞬時に出している状況をどう判断するのか、番組では全く説明していない。遺族の疑問点のイロハのイも解決していないのである。

もし、爆発音の発生源や機体の状況が全く分からないまま迷走していた、と結論づけるのであれば、爆発音直後にスコーク77は出さない。異常音直後、客室乗務員(チーフ)に、客室の様子を確認するのが先である。しかし、コックピットはすぐにスコーク77を出した。つまり、「まずい」という言葉から考えると、恐らくその直前まで、何かを目撃し、又は何か予兆を感じていて、それでやっぱり!ということで、すぐ出したのなら、筋が通っている。番組では「まずい」の後の説明がないまま、つじつまの合わないことを無視していた。

③日赤の医師が自ら自衛隊に掛け合って、一刻も早く生存者を病院に運びたいという意思を強く自衛隊に伝えた、ということは事実として私も聞いたことである。しかし、その救助のためのヘリコプターがなかなか到着(2時間半以上も)理由を、マスコミ等のヘリが飛んでいたので困難だった、と自分たち(フジテレビ)も含めてマスコミのせいにしていた。

マスコミのヘリのせいとは、あまりに短絡的な言い方である。それはまるで、救急車やパトカーの到着が遅れたのは、新聞社の車が多くて現場に入れてもらえなかった、ということと同じである。

④あの日の気象状況のせい(南西の風や北東の風)で、風任せで群馬県上野村にたどり着いたのか?

飛行機のエンジンの右と左の出力を変えながら旋回して進路を微調整していたのに、急に風任せに変わったのか?ヨットでもあるまいし、ジェット燃料もたくさんあった。最後の墜落場所を風任せと結論づけるのか?

番組を締めくくる言葉に「運命」という言葉を使い、情緒的に終わらせている。

どこが科学的データに基づいた番組なのか、最後に運命のせいだ、とは?

 

以上、主な分析のみ掲載しました。

乗客の証言に基づいた機内再現ドラマ、とだけ宣伝すれば少しは価値があったと思いますが、遺族の疑問点も全く解決しないまま、都合の悪い部分を切り捨てて、都合良く出来ました、と誰かに花丸をつけてもらいたかったような内容でした。

マスコミの使命とは、何でしょうか。つくづく考えさせられた番組でした。

このことについては、私の知る遺族の方と情報を交換し、話し合ってみようと思っています。